プロの魚料理【西潟真人】簡単!イシモチの捌き方、刺身と塩焼きが美味!~how to fillet a croaker,sashimi,Japanese

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 一般にイシモチ(石持ち)と呼ばれるのは、内耳にある耳石が大きいからだ。スズキ目ニベ科の魚は17種あるが、関東ではシログチが最も多い。
 東京湾なら、春のボート釣りだろうか。シロギス狙いに、シログチが掛かる。20センチもあると強い引きにビックリするが、食味の人気はいまひとつ。本命に対すると、外道扱いだ。
 釣り上げると、「グゥグッ」と音を出す。愚痴のように聞こえるから、「グチ」と呼ばれる。その音源は大きな浮袋にあって、分厚いニカワ質は煮込んで強力な接着剤に用いたと聞く。張りつかない(相手にされない)ことを、「ニベもない」といわれるゆえんだ。
 韓国では、チョグの名で人気の魚。フライパンで焼いたり、中華風に揚げたりもする。シログチを特に好んだわけではなく、安い大衆魚なのだろう。沿岸の砂底に、多く群れている。

 白身はやや灰色がかって軟らかく、水っぽいせいか締まりがない。刺し身より、塩焼きが好まれることに納得するも、生食は魚を味わう基本。
 友人のウエカツこと、元水産官僚の上田勝彦氏に教わった料理がおもしろい。名して「塩イシモチ」は、シログチの欠点を補い、持ち味を存分に生かすのだ。
 軟らかいウロコを剥がしたら、内臓を出して水洗いする。水気を拭き取り、全てのヒレを根元から切り取るのは、雑菌の侵入を防ぐためだ。
 腹の内側まで塩を揉み込み、吸水紙に包んで一晩置く。水洗いして冷蔵庫に再度寝かせれば、4~5日は刺し身でいける。引き締まって香り高い、生のシログチが楽しめる。水っぽかった身がグッと締まって、上質な白身の味わいだ。醤油はつけず、ワサビのみでいい。
 そのまま焼けば塩焼きだ。ほんのりと塩味がついて、ほどよく水分が抜けた身は反り返るように焼き上がる。こういう魚は、手でちぎって食べたい。
 浮袋と、それを取り巻く薄腹の周辺はウマ味の塊。良質のニカワ質は濃厚な煮こごりになる。煮込めば少量だって、うれしい酒の肴(さかな)だ。

 同じ仲間に1メートルを超すオオニベがいて、九州の宮崎では郷土料理に。皮も胃袋も湯引いて刺し身に添えたり、鍋に入れたりの豪華コースだ。
 ニカワ質の「質」って何? 東洋大学の吉江由美子教授(水産学)に聞くと「の、ようなもの」と返答があった。ゼラチン質も似たようなものだ。(西潟正人「捌きも調理も10分 魚食いの実況中継」=日刊ゲンダイ2019年3月27日号より)
 ◆西潟正人(にしがた・まさひと)=魚の伝道師。東京海洋大海洋生命科学部非常勤講師(魚食文化論)。

#西潟正人#イシモチ料理#日刊ゲンダイ

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