簡単プロ技!【西潟正人】クロダイ料理、捌き方、塩焼き~how to fillet a black sea bream,sashimi,Japanese
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◆魚食いの実況中継「クロダイ」西潟正人
赤いマダイに対して、黒いクロダイ。日本でタイの名がつく魚は350種を超えるが、タイ科は13種ほどしかない。“あやかりタイ”が多い中で、クロダイは正真正銘のタイ科の魚だ。
本州以南の岩礁域にいて、港から河口にも入り込む。足元に潜むタイとあっては、釣り人の格好の的だ。クロダイは食味より、もっぱら釣り人気で勝っていた。庄内藩が推奨したという“勝負、勝負”のクロダイ釣りである。
関東では、幼魚をチンチン、若魚をカイズ、成魚になってクロダイと呼ぶ。ところがこの魚、ケイズと呼んで正統らしい。明治の文豪、幸田露伴の一説。「カイズは訛(なま)りで、系図を言えば鯛のうち、系図鯛を略してケイズという」と、江戸前の釣り風景を描写した「幻談」にある。
関西では、クロダイをチヌと呼ぶ。いずこも釣り人ばかりが血眼で、魚屋に並ぶとゲス扱い。鯛は、赤色が好まれるようだ。
タイ科の魚は、魚料理で基本形といえる。タイ形の魚でおろし方を覚えると、どんな魚にも通用する。ウロコをかき落とし、腹を開いて、エラと内臓を取り出したら、血合いを切って、水洗いする。
30センチほどのクラスなら、頭部は大きく落として塩焼きだ。タイ科は骨が硬いから、二つ割りには要注意。脳天の芯に包丁が入ると、小気味良いほど真っ二つになる。
中骨に沿って三枚におろしたら腹骨をそぎ、血合い骨を切り取る。4本のサクを金串に刺し、皮面だけをじか火であぶる。冷水に浸して水気を拭き取り、皮つきのまま刺し身にする。
クロダイの火取りは、見るから勇壮だ。桜色のマダイに対して、クロダイは男っぽく見える。端午の節句には、クロダイで祝った地方もあると聞く。
三浦半島を根城にして、クロダイ釣りに夢中になったころがある。エサは生サナギで、ふかせ釣り。所定場は、葉山マリーナ下の、いけす跡だった。朝まずめの、その瞬間に小さな浮きはクッと止まる。竿を立て、得意げに玉網で捕ると、ヤツは怒ったように釣り人を睨む。朝日に輝くいぶし銀、荒い息づかい。地上に驚くより、断末魔を見る命の目だ。
クロダイは、もの言う魚であった。魚にも思いがあることを教わった。
(日刊ゲンダイ2019年4月3日付より)
◆にしがた・まさひと 魚の伝道師。東京海洋大海洋生命科学部非常勤講師(魚食文化論)。
#西潟正人#黒鯛の捌き方#日刊ゲンダイ