簡単!【カサゴ料理】魚の伝道師・西潟正人LIVE⑳ 俺の魚料理を喰ってみな! how to fillet a rockfish,sashimi,Japanese

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日刊ゲンダイ本紙連載(2019年2月13日付)
「魚食いの実況中継 西潟正人」アヤメカサゴ編より

 スズキ目メバル科は、40種を超す大所帯だ。「日本産魚類検索 全種の同定・第三版」(中坊徹次編・2013年)により、カサゴ目から独立した。
 アヤメカサゴは20センチほどで、赤黒い模様をしている。水深100メートルより深場に生息するため、釣り上げると、眼球が飛び出してしまう。一般に聞き慣れないカサゴの仲間だが、知る人ぞ知るおいしい魚だ。
 遊泳してまで、遠征することを好まない。磯根の奥にひっそり潜みながら、眼光は鋭く獲物を狙っている。大海では、小魚にすぎないが、面構えに、したたかさがうかがえる。
 カサゴ類は似たような色模様で種が違うから、見分けが難しい。アヤメカサゴに近いのは、カサゴとウッカリカサゴ。でも、料理法は、みな同じ。引き締まった白身は、刺し身でよし。煮ても、焼いてもよし。

 顔の面白い小魚の刺し身は、姿造りにすると一興だ。「対峙してこの魚を食べている」という実感が、味わいを増幅させる。あれもこれも姿で見せたり、飾りすぎたりすると興ざめだが、この魚は別。驚きが華、の料理法だ。
 下ごしらえが済んだら、胸ビレの際から大きな頭部を落とす。三枚おろしは基本通りで、腹骨と血合い骨を切り取る。
 4本になったサクは、皮面だけをじか火で焼く。素早く冷水に取れば、皮つきのまま刺し身にできる。カサゴの色模様が残って、皮下の脂も味わえる。
 姿造りを堪能したら頭部を2つに割り、中骨も入れて味噌汁にする。水から煮て、アクを取り除いたら自然に冷ます。再度温めると、骨の髄から細かな脂が浮いて出るはずだ。
 カサゴの力強いダシに味噌を溶かし入れ、仕上げに長ネギを散らす。熱々をすすれば、カサゴと味噌との相性の良さに感動を覚えるだろう。

 アヤメカサゴは沖合の深場をすみかとするが、カサゴは沿岸の岩礁地帯や、堤防の隙間などにも潜む。
 重りと釣り針が直結したような「ブラクリ」という仕掛けを岩穴へ落とす。ゴツンッ、と手応えがあって、デクデクデクとした震えは腕まで伝わった。
 どんな大物かと思いきや、7センチほどのカサゴである。背ビレを張ると勇壮に見えるが、家に持ち帰ると見る影もない。子供時代の、遠い思い出だ。

◆西潟正人(にしがた・まさひと)
 魚の伝道師。東京海洋大海洋生命科学部非常勤講師(魚食文化論)。

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